IPSG包括歯科医療研究会発信|顎関節症、テレスコープシステムの専門家が歯科医療の現場と実際を綴るブログ:ドイツ式入れ歯リーゲルテレスコープをはじめて日本に紹介した稲葉歯科医院がお届けする、使用感・審美性ともに優れた本当の入れ歯とは?そして歯の治療にまつわるあれこれなど。

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『ドイツ最先端義歯とインプラントの融合』その1〜技工部門〜

IPSG事務局、稲葉由里子です。

2014年4月27日、IPSG包括歯科医療研究会発足20周年を記念して、学術大会が開催されたのでご報告させて頂きたいと思います☆♪

記念行事の最も重要なイベントとして、ドイツ補綴学の権威であり、チュービンゲン大学の医学部長であり、ドイツ補綴学会会長も歴任された、Prof.Dr.H.Weberをお招きしました。

「ドイツ最先端義歯とインプラントの融合」と題し、Weber教授の30年以上にわたるチュービンゲン大学における臨床研究結果から、インプラント上部構造や可撤性補綴に関する、最新の放電加工技術を用いた補綴治療を中心にご講演していただきました。

沢山の素晴らしい先生方の講演がございましたので、お一人ずつご報告させていただきたいと思います☆♪  

今回のWeber教授の講演に合せて、技工部門として、関聖生先生(京王歯研代表、本研究会会員)にトップバッターをお願いさせていただきました(^_^) 

『工業界の加工技術を応用したインプラント上部構造及びテレスコープシステム』 

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関先生は、30年程前から多数歯欠損補綴に取り組んでいらっしゃり、マテリアルとして貴金属や当時ほとんど使用されていないCo-Cr-Ti合金による、メタルボンド前装リーゲルテレスコープやテレスコープシステムを手がけられてこられたそうです。

1998年にはチタン鋳造法を開発、インプラント上部構造を組み込んだテレスコープ、そして最近では、放電加工による製作方法に取り組んでいらっしゃいます。

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現在これらのマテリアルの加工に、Co-Cr用やTi用鋳造機によるフレーム鋳造、レーザ加工機による溶接や盛りたし加工、ドイツSAE社の歯科用放電加工機によるインプラント上部構造の適合修正や、既製品リーゲルテレスコープのフレームへの取り組み、フリクションピンの穴あけ加工などに使用していらっしゃいます。

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そして、天然歯を一次固定し、インプラントの上部構造に可撤性のテレスコープシステムを応用した症例なども多数みせていただきました☆

これらの、技工作業の平均製作時間は、150時間、160時間かかります。

場合によっては、前装のやり直し、バイトの問題があると、もっと時間がかかります。

最後に先生方にお願いがありました。

『正確なバイトをとっていただきたい。』 

ほとんどのケースでバイトが狂っているそうです。

先生方は簡単に削合、修正をだしますが、作る側はこのように長時間かかっています。

これまで、やって来た事がすべて無駄になってしまうということを知って頂きたいと思います。

他の技工士の先生からも、フルブリッジを簡単に再製をだす先生がいらっしゃると聞いた事があります。

ドクター側も、技工所にお願いする時は、何度もチェックしてお互い遠回りしないようにしていきたいものですね。 

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続いては、長年ドイツに滞在され、日本人初のドイツ技工マイスターである大畠一成先生(デンタルラボア・グロース代表、本研究会会員)に、日本とドイツの歯科技工の違い、物の考え方や価値観について講演をいただきました。

『ドイツにおける歯科技工教育制度とその歯科技工のトレンド』 

ドイツにはマイスター制度が存在し、「その道のプロ」たる職人の長として国家資格を習得し、その分野で十分な経験を積んで一流の技術を磨く事はもちろん、後身指導も行うそうです。

国際化に伴い、マイスター制度が問題となり、最近では、マイスター称号94業種から41業種となったそうですが、もちろん歯科技工士は41業種の中にあります。

大畠先生は、年間最優秀マイスターとして表彰され、日本人としては初めてマイスターを取得されました。

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可撤性テレスコープ補綴装置は、固定性補綴装置に相当する快適性を示すと同時に、適応する素材を応用することによって、より完全な審美性を患者様に提供することが可能となります。

ということで、沢山の臨床ケースを見せて頂きました。

トレンドとしては、テレスコープの内冠も白くすること。

内冠を外した時のゴールド色に抵抗がある患者様もいらっしゃるからだそうです。

林昌二先生とのお仕事も素晴らしかったです。

ガルバノキャップの外冠とナノジルコニアフレームの接着など、可撤性テレスコープの症例をみせていただきました。 

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最後に、大畠先生の愛娘、ゆりさんのお写真をみせてくださいました。

素敵です☆♪

やはり、天然歯に勝るものはありませんが、高齢化社会が進んでいる今の日本の現状では危機管理ができる、可撤性補綴『テレスコープシステム』の技術を身につけるのは非常に大切だと感じます。

その意味で、今回のIPSG20周年特別記念講演のテーマ

『ドイツ最先端義歯とインプラントの融合』は、これから日本で求められる技術だと思います。

IPSG会員で技工士の中沢勇太さんから関先生、大畠先生のご講演の感想をいただいたので、ご紹介させて頂きたいと思います☆♪

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IPSGに所属する技工士とし、とても注目していたのが、京王歯研のリーダーである関先生そして、日本人初の技工マイスター大畠先生のお話でした。

関先生は経歴からもわかる通り、技工を他分野から追求し、様々な高度技術を用いて精度の高いインプラントリーゲルや、 デンチタンなどのノンプレシャス合金を用いたテレスコープ技工を可能にした、素晴らしい技工士であり、講演されるのをずっと楽しみにしておりました。

大畠先生からは、ドイツのマイスター制度について聞かせて頂けるのと、テレスコープ症例を見せて頂けるのを期待しておりました。

関先生の講演内容からは、多くの臨床ケースをスライドで紹介していただき、大型のケースであっても長期間患者の口腔内にとどまっているものや、高度なミリングテクニックの実践症例を見ることができ、大変勉強になりました。

今まで自分の勉強不足から、姿の見えなかった放電加工の一部を知り、インプラント上部構造の完璧なフィットを出す様子はとても衝撃的でした。

またCAD/CAMによる旋盤加工でほぼすべてのインプラントシリンダーやロケーターに対応できるのは、本当にすごいことであると思いました。

残念だったのはリーゲルテレスコープの技工的な部分をもう少し詳しく知りたかったのですが、またいつか講演していただけたらうれしいと思います。

また、講演後にも質問に答えていただいたり、アドバイスをいただけたことはとても貴重な経験となりました。

大畠先生は私が学生のころからのあこがれの存在であり、レベルの高い技工物、とくにセラミック技工はずば抜けていて、真似をすることのできないものでありました。

今まで鋳造床専攻の私からしてみたら、想像もできないような匠の仕事であり、ただただ感動いたしました。

またドイツの技工士認定制度マイスターの詳細を知ることができ、誰でもが開業できてしまう日本の歯科技工の現状の利点と問題点についても考えさせられました。

技術職である技工士に対しての認識の違い、誇りを持って仕事をする姿勢は、残念ながら日本よりドイツの方が優れており、日本も何らかの認定制度を設けてもいいのではないか、誇りある歯科技工を行える環境作りが、日本でも進んでほしいと思いました。

テレスコープ技工の道を歩み始めた私にとって両先生の講演内容は、テレスコープ技工の歴史と進化を知ることができ、進むべき道と目標を明確にすることができました。

私も関先生、大畠先生のように、知識や技術に裏付けられた技工ができるように日々精進しレベルを上げていきたいと思いました。

歯科技工士:MDLキャステティックアーツ 中沢勇太


2014年05月11日

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