IPSG包括歯科医療研究会発信|顎関節症、テレスコープシステムの専門家が歯科医療の現場と実際を綴るブログ:ドイツ式入れ歯リーゲルテレスコープをはじめて日本に紹介した稲葉歯科医院がお届けする、使用感・審美性ともに優れた本当の入れ歯とは?そして歯の治療にまつわるあれこれなど。

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2014年07月23日

『総義歯ライブ実習コース』いよいよセットです!

当日の朝。

父である稲葉先生に、「大丈夫だった?」

と聞いてみると・・・

「大丈夫じゃなかった。」

という返事が(-_-)

いつも自信満々なのに、長い間この実習をやって来てこんな答えははじめてです。

「小平君にかかっている」

と稲葉先生。 

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前日夜の8時に試適が終わり、模型を託された小平先生。

徹夜で、排列と歯肉形成の修正をしてくださいました。

そして朝の8時にイボカップシステムの重合完成。

その足で、研修会場に駆けつけてくださいました。 

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研磨の模様です。

今回の実習コースは技工士の先生方も多く、小平先生の手元を注意深くご覧になっていらっしゃいました。 

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そして完成した義歯がこちらです!

患者様の口腔内とは違って、左右対称です。 

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さて・・・

どうだろう。

本当に心配です。 

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患者様にセット。

すると、驚く程口元が美しくなりました。

前日の試適で心配だった部位は、小平先生が修正してくださり、適合もばっちり。 

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先生方お一人お一人に実際に口の中を触って頂きました。

下顎は揺すっても外れない。 

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もちろん、上顎は患者様ご自身でも外すのが難しいとおっしゃっていただきました。 

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先生方遠慮して触ってるのかなと思い、私も恐る恐る触らせて頂いたところ、

よかった!!

いつもの吸着力、発揮できていて、吸い付くようです。 

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患者様の初心の口元です。 

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そして、横顔。 

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こちらが、新しい義歯を装着後の口元です。

目元を隠してあるのでわかりにくいかもしれませんが、別人のように美しくなりました。 

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横顔もとても綺麗です。

あれだけ大きく見える、シュトラックデンチャーは口の中に入ると驚く程自然です。

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セットしてすぐに、お弁当を一緒に食べていただきました。

痛かったら噛む事ができませんし、飲み込むこともできません。

でも、患者様は前歯で軽く噛むだけでお新香もゴボウも召し上がっていらっしゃいました。 

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「お肉も食べられそうです。」 

「今迄食べた後、下の入れ歯に食べ物が詰まったけれど、全然詰まらないです。本当にありがとうございました。」

とおっしゃっていただきました。 

排列、歯肉形成のトラブルがありましたが、その後の小平先生のリカバリー、頭が下がりました。

本当に今回ほど、技工士の先生との連携の大切さを強く感じた事はありません。

そういう意味でも素晴らしい実習だったと思います。

また、稲葉先生の確実な印象と咬合採得がなかったら、 このような結果は出せなかったと感じます。

最後に、稲葉先生

「ゆりちゃん、よかった!!」

と喜んで、腕を掴まれました。

こんなに何度も涙ぐむ実習もいままでなかったと思います。 

岩田光司副会長には、排列作業中、ご自身の症例を画面でシェアしてくださったり、全力でサポートしてくださいました。

最後のまとめの講義素晴らしかったです。 

先生方からも沢山の感想をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

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▼稲葉先生の仕事ぶりにあらためて感動しました。技術はもちろんのこと、あきらめない姿勢には本当に頭がさがりました。少しでも明日から臨床へいかしていけるようにがんばっていきます。有難うございました。   

▼今日、試適後の調整を見ることができる貴重な経験をさせて頂きました。試適あとのエラーが発生しても例年通り素晴らしい結果をみさせて頂きまして、やはり教授はすごいなと改めて感じました。  

▼総義歯の全体の流れ、特にラボではあまり見えない、フェイスボー、バイトや試適など貴重な経験ができました。気を抜けない講習会で最初から最後までペンが走っていたと思います。普通の総義歯は知っています。でもきちんとした総義歯の過程も含め初めて知りました。これからコツコツと知識を会得しまた来年参加できるように少しずつ前に進もうと思いました。これから自分自身やってみて一発目から完璧にはできないと思うので数々の疑問が出るか楽しみです。  

▼患者さんが義歯をセットして痛みもなく食事もとれていた姿を見て感動しました。小平さんみたいに稲葉先生のような素晴らしい先生とパートナーを組んで患者さんが満足する義歯を作れるようような技工士になれるように勉強したいと思いました。今後できるだけ稲葉先生のセミナーを受講していきたいです。今日はどうもありがとうございました。  

▼私の目標である臨床の集大成である講習を新人にも理解してもらいたく参加しました。日頃私の言っている材料操作等、基本の重要性と口腔内、顎関節の重要性を理解してもらえたようです。土曜日の勉強会にやるき満々です。私は休みがなくなりそうです。  

▼3日間内容が濃くて覚える知識が膨大でした。特に稲葉先生の排列の仕方とリカバリーの方法が見れてとても参考になりました。これから自分の診療所で実践にうつるわけですが、今回が入門編とするならばアドバンスコースがあればうれしいなと思いました。  

▼TF時にはどうなるかと思いましたが、セット時には完璧でした。さすがです。この義歯製作法のすごさを実感しました。ぜひ自分でもシュトラックデンチャーをつくってみたいです。  

▼すべての作業手順が考えぬかれており感動しました。真似していきたいと思います。  

▼オリジナルとイボクラーデンチャーシステムのビデオを見て、更に改良を加え、IPSGの究極の総義歯システムに到達した流れが非常によく解りました。今回は顎堤の高さが左右ことなり、アーチもゆがんだ目の錯覚をおこしやすいマウントの難しいケースでしたが、フェィスボウで正中をとり、模型の基底面をカンペル平面にそろえることで感覚に左右されず咬合器に装着する大切さがよく解りました。  

▼稲葉教授の講義は何回聞いても新しく学ぶことがあるところがすごいと思いました。  

▼3日間で全ての治療過程を勉強することができました。有難うございます。実際の患者さんで結果をみることができ、感動しました。  

▼今回もダイナミックな講演を有難うございました。新人もすでにやるき満々です。材料操作、医療技術、技工技術の融合は圧巻でした。 

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IPSG研修ルームで初の開催、総義歯ライブ実習コース。

最後まであきらめない稲葉先生とそれをサポートする幹部の皆様、そしてとても真剣に受講してくださった先生方、そして患者様のご協力のおかげで無事、成功に終わりました。

魔法のように鮮やかにうまく実習よりも 会場の先生方には、より多く学ぶところが多かった ライブだったと思います。

3日間、本当にありがとうございました! 

 

 

 

投稿者 shige : 12:24 | コメント (0) | トラックバック

2014年07月22日

2014『総義歯ライブ3日間実習コース』2日目♪

今日はいよいよ『上下顎同時印象』です! 

2日目は9時からの開催となりましたが、はやくから先生方にお集りいただき、テキストをご覧になったり、稲葉先生に質問されたり、熱心さが伝わってきました。

前日に準備しておいた、上下顎同時印象用のトレーを試適。

最初にゴシックアーチの描記を行いました。  

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■ゴシックアーチ

稲葉式は歯列上の3点法にて描記を行います。

セントラルクラッチの場合、描記芯と描記盤が口腔内中央に位置するため、舌を後退させなければゴシックアーチを描記することが出来ず、自ずと下顎後退位にて、描記されます。

舌後退位により、最大2mm程度下顎位は後退すると言われています。

シュライヒ先生はゴシックアーチのアペックス上ではなく、描記された前方運動上のアペックスから2mm前方に中心位を定めていました。

舌後退位も必ずしもまっすぐ後方に下がっているわけではなく、右より左よりなどに下げる人もいます。 それにより、左右どちらかに偏移した偏心位になる可能性がとても大きいです。

稲葉先生が歯列上でゴシックアーチを描くのは、アペックスを舌に阻害されることなく、再現することが可能です。

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すべてチェック後、いよいよ『上下顎同時印象』です!

印象材の量がポイントだと説明があり、出来る限り患者様が苦しくないように、10分の間冷静に鼻で息をしていただけるように経験上のポイントをいくつかご説明させていただきました。  

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私もそうですが、焦ってしまうと、印象材を多くつぎ込んでしまったり、どちらからトレーを印象したら良いのか、そして大事な嚥下をさせてしまうのを忘れてしまうことがあります。

印象材を注ぎ込んだ後、患者様の喉を触る事を忘れないでください。

ポイントです。

嚥下をしていただくことで、中心位の印象を採る事ができます。

上下同時印象は、噛めるところ、即ち中心位での印象が採れる唯一の方法です。 

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咬合採得、中心位記録、フェイスボートランスファー、ゴシックアーチを1度で行う事により、 一連の作業を簡易化することができると同時に、患者様の情報を、咬合器に確実にトランスファーすることが可能になります。 

フェイスボートランスファーを使用することで、矢状正中とカンペル平面を読み取ることができます。

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このように一塊ですべての情報をコピーすることができます。

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印象材の量も適切です。   

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今回、技工を担当してくださったのは、小平デンタルラボの小平雅彦先生です。

小平先生は、故岡部宏昭先生の弟子でもあり、IPSGのVIP会員でもあります。

岡部先生亡き後、シュトラックデンチャーを継承してくれる技工士として、期待が高まります。  

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これで、患者様の口の中の状態をすべてトランスファーできました。

石膏コアを製作後、いよいよ排列です。 

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稲葉先生自身がすべて排列をし、先生方にご覧頂きました。

人工歯はシュトラックがデザインした、オルソシットを使用します。

この人工歯は25度の角度が与えてあります。

咬合様式は、フルバランスドオクルージョンです♪ 

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実は排列から、患者様の試適まで、1時間半。

時間がないところで、稲葉先生排列をさせていただきました。

実際に患者様に指摘させていただいたところ、咬合高径がなぜか上がってしまったり、歯肉形成がうまくいかなかったりとエラーが発生。

夜の8時迄、稲葉先生あきらめずに再排列。

先生方にも患者様にもずっとお付き合いいただきました。

試適、そして重合まで2日目で終わらせる必要があります。

だいたいのところまで、決めて、あとは技工士の小平先生に託しました。 

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シュトラックデンチャーの歯肉形成、よくご覧頂きたいと思います。

バッカルシェルフの厚み、そしてサブリンガルルームの大きさが特徴です。

現在のBPSの外形に比べて、大きく違う点だと思います。

2日目修了。

明日はいよいよセットです! 

投稿者 shige : 12:39 | コメント (0) | トラックバック

2014『総義歯ライブ3日間実習コース』1日目♪

IPSG事務局、稲葉由里子です。

7月19.20.21日『総義歯ライブ実習コース』が開催されたので、ご報告させていただきます♪

実際の患者様をお呼びして、問診からスタディーモデルの印象、上下顎同時印象、 咬合採得、ゴシックアーチ、排列、重合、最後のセットまですべてライブでご覧いただけるセミナーです。

3日間3回に分けてお伝えしたいと思います(^_^) 

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稲葉先生の右腕として技工インストラクターをつとめてきた、故岡部宏昭先生。

Dr.Hans Shleichの総義歯コースでも活躍されていた、素晴らしい先生でしたが、大変残念ながら、昨年末お亡くなりになりました。

岡部先生がいない、総義歯コース。

今回のメインサポートであり、一部講義も担当するのは、IPSG副会長、岩田光司先生、アシスタントとして、佐藤孝仁先生、技工アシスタントとして、小平雅彦先生、中沢勇太君、映像担当は稲葉則子ということで、IPSGスタッフ力合せての総義歯セミナーとなりました。

義歯を吸着させるだけではなく、咬合をどのように与えるかが、ポイントです。 

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今回ご協力いただいた患者様は、38歳女性。

1年前に稲葉歯科医院に来院されたのですが、残念ながら重度歯周病のため総義歯となりました。  

患者様のスタディーモデル採得の様子です。

スタディーモデル用のトレーはAccu-tray、Ivoclar-Vivadent社から販売しています。

総義歯に必要な部位をこのトレーを用いる事で的確に採得することができます♪ 

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模型分析の様子です。

IPSGセミナールームの特徴として、口腔内や稲葉先生の手元がこんな風に拡大してご覧頂けるため、先生方に詳細に学んで頂く事ができます(^_^) 

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上顎のスタディーモデルです。

歯周病を煩っていたので、左右骨の吸収が非対称、第一横口蓋数壁が消えています。

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(故岡部宏昭先生資料より) 

【CPCライン】

Canine(犬歯) Papilla(切歯乳頭) Canine(犬歯)を結ぶ線は総義歯の排列の基準になります。

切歯乳頭の中点から7ミリ外側(唇側)に中切歯唇面。

第一横口蓋数壁の末端からCPCラインに向かい9ミリ外側に犬歯の最大豊隆部。

CPCライン上に犬歯尖頭。

第一横口蓋数壁末端から2ミリ外側に犬歯の舌側の歯頸部です!

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下顎は歯槽頂が尖っていて、舌側にアンダーカットがあります。 

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(故岡部宏昭先生資料より) 

【パウンドライン】

下顎の犬歯の近心隅角とレトロモラーパッドの舌側面を結んだライン。

そして、大切なのは顎舌骨筋の付着の仕方を頭の中に入れておく事です。

この部分は、シュトラックデンチャーでは使いません。

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スタディーモデルを元に作った上下顎同時印象用トレーです。  

気になる咬合採得は・・・ 

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(故岡部宏昭先生資料より)

上唇小帯最深部から上顎切歯切端まで22ミリ。

下唇小帯最深部から下顎切歯切端まで18ミリ。

を基準に38ミリから40ミリに合わせればだいたい決まります。 

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口腔内でも同じ状態が再現できています。

ほとんど、咬合高径はこれで予測できました♪ 

これで、2日目の午前中、上下顎同時印象をするための準備が整いました(^_^)   

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ここで、稲葉先生の総義歯、シュトラックデンチャーのコンセプトをお伝え致します。 

今までの日本の総義歯は、顆路傾斜を計って、ベネット角を再現してフルバランスを作る方法でした。

患者様の顆路を計り、チェックバイトで咬合器を調整していた従来の方法です。

しかし、老人の顆路は丸みを帯びていて平らな形に変形してしまっています。

従来の方法は、この平らな顆頭に合せて計測するため、平らな咬頭の義歯になってしまうということです。 

シュトラックデンチャーは、オルソシット人工歯の咬頭傾斜は25度と決まっています。

従って、義歯が顆路を誘導するというコンセプトです。

義歯が顆路を誘導するには、適合性が相当良くて義歯が動かない様な物を作らないといけません。

顆路は、リモデリングされます。

関節と窩、円板を介在させてわずかに離れる程度の誘導です。

そこが、従来の方法とシュトラックデンチャーとの大きな違いと言ってもいいでしょう。

一日目が修了。

今回開始直後にカメラとモニターの配線がうまくいかない事態が発生。

わたしがほうぼう近所の電気屋さんに涙目で聞き歩いたけれど見つからないということがありました。

結局、技工士の中沢君が粘り強さで、配線を正しくつけかえ、復活した事件もありました。

ご参加いただいた先生方、ご迷惑おかけいたしましたm(_ _)m 

懇親会の模様です!!

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2日目、3日目もよろしくお願いします(^_<)-☆ 

 

 

投稿者 shige : 09:16 | コメント (0) | トラックバック

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